近年、取引所間の仮想通貨送金を規制する「トラベルルール」の国内導入が進められています。この法規制はマネーロンダリングなどの防止を目的としているものの、取引の自由性を制限しているとの批判も少なくありません。
今回は海外取引所「Bybit」に焦点を当て、トラベルルールの影響と国内取引所の対応方針を整理しました。Bybit自体は直接影響はありませんが、国内取引所からの送金可否は各社で異なる判断が下されています。
株式会社GMOコインはBybitへの送金自体を禁止していますが、CoincheckやbitFlyerは送金を継続する方針のようです。詳細は本記事で解説しますので、ぜひ最後まで御覧ください。
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Bybitトラベルルールへの対応状況
Bybitトラベルルールへの対応状況ですが、国内外の主要な取引所ではトラベルルールへの対応が進んでいます。Bybit自体はドバイに拠点を置く海外取引所であるため、直接的にはトラベルルールの影響はありません。
しかし、国内取引所からBybitへの送金可否に関しては、各取引所のトラベルルール対応方針の違いから、取引所によって異なる判断が下されています。
例えばGMOコインでは、Bybitを含む特定の海外取引所への送金を禁止する方針としています。これはトラベルルール遵守のための措置であると考えられます。
一方、ビットバンクやCoincheckなどでは、Bybitへの送金は可能としています。但し、入金時の手続きに多少の遅延が生じる可能性があります。
こうした現状から、Bybitを含む複数の海外取引所で資産を分散して保有しつつ、送金可否に優れた国内取引所を併用することが賢明でしょう。
GMOコインBybitトラベルルール対応
GMOコインはSYGNAの情報提供システムを採用している取引所です。同社は2023年5月31日からトラベルルールへの対応を開始しています。
対応後は金融庁の指定する20か国・地域の取引所や、オフショア取引所であるBybitを含む一部の海外取引所への送金が不可能となります。これはトラベルルール遵守のための措置だと考えられます。
一方で、非カストディアルウォレットであるMetamaskへの送金は引き続き自由に行えます。必要に応じてこれらのウォレットを経由して、間接的にBybitへ資金を送金することもできるでしょう。
bitbankBybitトラベルルール送金
bitbankはSYGNAシステムを採用する取引所で、6月9日以降はBybitを含む一部の海外取引所への直接送金が不可能になりました。
これは、異なる情報提供システムを使用していることや、トラベルルールに対応できていないことが理由だと考えられます。
ただしbitbankからも、同じSYGNAシステムの国内取引所を経由すれば間接的にBybitへの送金は可能です。手間はかかりますが、リスク分散のために複数の取引所を活用することが大切です。
Bybitトラベルルールウォレット利用
BybitやBinanceなどのオフショア取引所はトラベルルールの対象外であるため、国内取引所から直接送金が禁止される場面があります。
この場合、Metamaskなどの非カストディアルウォレットを経由すれば、トラベルルールの影響を回避できます。
例えば、国内取引所AからMetamaskへ、MetamaskからBybitへと送金することが可能です。手間はかかりますが、取引の自由度を確保できる方法といえるでしょう。
Bybitトラベルルール回避策
国内取引所からBybitへ直接送金が不可な場合の回避策として、次の2つの方法があります。
1つは、Metamaskなどの非カストディアルウォレットを経由する方法です。
もう1つは、トラベルルールの影響を受けにくいオフショア取引所を経由する方法です。例えば国内取引所Aからオフショア取引所Bへ、BからBybitへ送金することができます。
いずれにしろ手間がかかりますが、取引の自由を確保するにはやむを得ないでしょう。規制が変わる可能性もあり、複数の選択肢を確保しておくことが大切です。
Sygna採用取引所Bybit
SYGNAは台湾のCoolbitX社が開発した情報提供プラットフォームで、国内外の多数の取引所が採用しています。
SYGNA対応の取引所同士ならトラベルルールに基づいて送金が可能ですが、Bybitのように異なるプラットフォームを利用している海外取引所とは送金できないことがあります。
こうした場合、Metamaskなどを経由すれば規制の影響は回避できます。一方で手間は増えるので、SYGNA対応の国内取引所を併用することをおすすめします。
トラベルルールTrust対応
TRUSTは米国のCoinbaseなどが開発した情報提供システムで、主に欧米の大手取引所が採用しています。国内でもbitFlyerやCoincheckがTRUSTに対応済みです。
TRUST対応の取引所はトラベルルールに基づいた送金が可能ですが、残念ながらSYGNAネットワークとは互換性がありません。
このため取引所をまたぐ送金が制限されており、Coincheckからbitbankへ直接送金できない状況になっています。引き続き自由な送金を確保するには、個人ウォレット経由が現実的な選択肢といえるでしょう。
コインチェックBybitトラベルルール
Coincheckは2023年5月末からTRUSTによるトラベルルール対応を開始しました。この時点以降、非カストディウォレットやBybitを含む通知対象国以外の取引所への送金が可能とのことです。
Bybitは勿論通知対象国に該当しないため、Coincheckからの送金は今後も継続される見込みです。但し入金時に追加で情報を要求されるケースがあるとのことなので、その点には注意が必要でしょう。
日本のBybitトラベルルール対応
日本国内でのトラベルルール対応は、取引所を利用する個人の自由を制限する面があります。規制自体の目的には合理性があるものの、過剰な規制ではイノベーションが阻害されかねません。
引き続き柔軟な運用がなされることに期待したいところです。
bitflyerBybitトラベルルール
bitFlyerは2023年5月30日からTRUSTベースのトラベルルール対応を開始しています。
同社はBybitを含む金融庁の通知対象国以外の海外取引所への送金を可能としているため、当面はBybitへの送金に特段の制限はありません。
但し入金後に追加情報の要求が来る可能性があるので、その点には注意が必要です。極端なケースでは入金が遅延するリスクもあるでしょう。
Bybitトラベルルール入金方法
一部の国内取引所からBybitへ直接送金できない場合、Metamaskなどの個人ウォレットを経由する方法があります。
例えば国内取引所AからMetamaskへ、MetamaskからBybitへ送金することで、トラベルルールの影響をある程度回避できます。
手数は増えますが、取引の自由度を確保するうえで有効な方法といえるでしょう。状況に応じた柔軟な資金移動が可能になります。
仮想通貨Bybitトラベルルール
仮想通貨はグローバルな存在であり、各国の規制をある程度回避できる側面がありました。しかしトラベルルールの導入により、国内取引所の判断で海外送金が制限されるケースが生まれています。
これは仮想通貨本来のグローバルな流動性を阻害する面があるため、引き続き個人ウォレットの利用などによって規制の影響を回避する必要があるでしょう。
Bybitトラベルルールのまとめ
記事のポイントをまとめます。
- GMOコインはBybitへの送金を禁止
- bitbankは直接送金不可だが、国内経由なら送金可
- メタマスク経由で影響回避可
- オフショア取引所経由も回避策の1つ
- SYGNAとTRUSTの互換性なし
- CoincheckはBybit送金を継続
- bitFlyerもBybit送金継続の方針
- 個人ウォレットが規制回避に有効
- 取引所によって送金制限が異なる
- 柔軟な資金移動が制限される懸念